故障かなと思ったら
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《取扱説明書》をテーマとするSF・幻想短編アンソロジー。 文芸同人:ねじれ双角錐群により、文学フリマ東京35にて頒布。 B6版 226ページ。
収録作品
01 「森/The Forest」 石井僚一 ある一人の男が、学生時代に恋人と訪れた森を、大人になって再び訪れる。レイ・ブラッドベリの名作短編「みずうみ」をもとに書かれた抒情SF。 02 「取説ばあさん」 小林貫 「おぉ……旦那様。説明書を、おお……説明書をお持ちではありませぬか」 極彩色のネオンと喧噪、眠らないサイバーシティで取説ばあさんに遭遇したおれは、踏み入ってはならないとわかっていながらも、その妖しさに魅かれていく。 03 「私の自由な選択として」 笹幡みなみ 足の裏の特定の反射区を刺激することは、自由意志信念の強化に繋がり(Coolidge, 2035)、特定の気分障害に対して有効とされる(Coolidge et al., 2038)。本文書はこれらの研究を概説し、彼女の選択を伝える。 04 「故障とは言うまいね?」 Garanhead 「マニュアリストロ」。それは国の認証を受けた、良質な説明書を作成する者たち。彼らの手がけた説明書なくして工業製品の出荷や流通が成り立たなくなった未来。心が故障した少年と、体が故障した少女。二人の最年少マニュアリストロたちが出会う時、過去と未来を繋ぐ因縁尽のマニュアルが綴られる。 05 「直射日光の当たらない涼しい場所」 全自動ムー大陸 「説明書」を題材にした短歌十首。 06 「子供たちのための教本」 murashit 役所はわたしたちが死ぬ日を正確に知っていて、その期日を書留で通知する。民法上の子を持たない者には本人、持つ者はその子に書留を送る。わたしはある日、通知を受け取った。父は二週間後、死ぬことになっていた。 07 「沼妖精ベルチナ」 鴻上怜 底辺会社員の俺は部下のオッドラの教育に手を焼きつつ、人事としての業務を日々行う。そんなある日、社のデータベースがぬるぬるの粘液で覆われてしまう。忙しい情シスに代わって原因を探る俺は、地下で謎の老婆サーバやまんばと遭遇する。そしてそれとは関係なく、俺のもとへ1体の妖精が訪れる。沼妖精を名乗る少女は、行方不明の御婆を探しているらしいが―― 08 「閲覧者」 cydonianbanana 遮光スクリーンに覆われた窓、空調設備の定常的なノイズ、絵と本の切れ端に埋め尽くされた壁、椅子のない机、開かれたままの取扱説明書——登場人物不在、住人の輪郭を示す静物の素描で綴られた縮尺一分の一の地図をめぐる冒険がはじまる。